囈 語
竊盜金魚
強盜喇叭
恐喝胡弓
賭博ねこ
詐欺更紗
涜職天鵞絨(びらうど)
姦淫林檎
傷害雲雀(ひばり)
殺人ちゆりつぷ
墮胎陰影
騷擾ゆき
放火まるめろ
誘拐かすてえら。
『聖三稜玻璃』山村暮鳥/青空文庫より
10年間使ってきた腕時計がそろそろ寿命なのか本格的に狂いだしている。
去年から寒さには劇的に弱くなっていて、冬の夜間は止まる事が多かった。
今、すでに昼間でさえ、動かなくなってきている。
2秒毎に2メモリ分動いて、なんとか正確な時を刻もうとする献身さに涙が出そうになった。ありがとう、もう頑張らなくても良いよ。朝からずっと8時19分を指す腕時計をしている。最早微かに揺れるだけの秒針を見ながら、自分の時間でさえも止まったように思う。
捨てるという行為が苦手だった。
最後に行った東京デズニーランドのパンフレットや、海外で買ったペットボトルや、誕生日プレゼントの包装紙、年賀状、ちぎれたネックレス、捨てられずにどんどん溜まる。
利用価値があるかどうかではない。ただ、そこにある思い出だとか人の気持ちみたいなものが、消してしまってはいけない気がして捨てられないのだ。映画の半券はもう、印字は消えてただの白い紙になっている。増えるばかりで引き出しはもうぐちゃぐちゃだし、押入れもごちゃごちゃになる。だから、半年に一度くらい、思い切ってそういうものを捨てるようにはしてきた。そうやって捨てるたびに、自分の所有物は2/3くらいになった。
年を重ねていくと、要らないものに気付くようになる。手に入れないという選択肢も考えるようになる。昔よりは遥かに捨てることに抵抗がなくなってきた。
今、どれほどの物を持っているだろう。
動かない腕時計には自分の体温が伝わって、仄かな温もりを持っている。
こういう瞬間、今まで全く気にしたことなんてなかったのに「大きな古時計」を思い出して、嗚呼あの歌を作ったひともこんな気持ちだったのだろうか、と思う。
動かない時計を見つめて時間を忘れたりしたのだろうか。
自分の時間が止まりそうな感覚を味わったのだろうか。
時々、悲しむために理由があるのか、事象があって悲しんでいるのか分からなくなる。
好きだから恋人なのか、恋人だから好きなのか
楽しいから盛り上がっているのか、盛り上がっているから楽しいのか
感情が先にあるのか言葉が先にあるのか分からなくなる。不安になる。
前も似た様なことを言っていた気がします。
独りじゃないから寂しくないことも無いし
楽しいから切ないと思わないことも無い。
きっと、寂しさだとか切なさが消えている瞬間っていうのは結局の所、「そうでない」という否定でしかないという事なんでしょう。
という感じの事を友人が言いたがって混乱していたような気がします。
違うかも。でもこれは私の言葉。
暫く降り続く雨はどこの地を固めようとしているのでしょう。
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